
ベランダで楽しむ、やさしい藍染め入門
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藍染めと聞くと、伝統工芸の世界で職人さんが大きな甕で染めているイメージ。
なんだか難しそうに思いますよね。
でも実は、一番手軽に変化を楽しめる草木染めは藍だと私は思います。
今回は、私が毎年ベランダで楽しんでいる藍の育て方と、生葉染めの魅力をご紹介します。
ベランダでもできる!藍の育て方
毎年春になると、マンションのベランダで藍を育てています。

(写真提供:@kana.e36 様)
- 種まき:4月上旬、小さめのポットにたっぷり種をまきます。
- 植え替え:ある程度育ったら、大きめのプランターに引っ越し。
-
大切なのは日当たりと水:肥料や土よりも、まずは日光と水。
ベランダの一番南側に置き、水を切らさないことが元気に育てるコツです。
今年は、エアコンの室外機の水が流れる場所に不織布プランターを置いたら、
まるで自動水やりのようになり、すくすく大きく育ちました。

生葉染めの魅力

去年までは子どもと一緒に、葉っぱを叩きつけて模様を出す「たたき染め」を楽しんでいましたが、中学生になった子どもはもう卒業。打ち付ける作業も意外と大変なので、今年はお休みです。
その代わり、毎年恒例の生葉染めをしました。
生葉染めの仕組み
藍の葉に含まれる色素は、インディカン(Indican)と呼ばれる無色の物質です。
葉を揉むと、インディカンが浸出し、酵素の働きで無色のインドキシル(Indoxyl)に変化します。インドキシル(Indoxyl)は、空気に触れると酸化して青いインディゴ(Indigo)に変化します。そしてこのインディゴは、水に溶けないため、布の表面に定着し、洗っても落ちません。
このプロセスを何度も繰り返すことで、少しずつ青が深まっていきます。

生葉染めは、このモミモミ工程が大変なところ。葉がたくさん要りますし、染めムラも出やすいですね。
今年は、生葉を3日間ポリバケツに張った水に浸して発酵させ、インドキシルが溶け出た状態の発酵液を作りました(インドキシルは水溶性)。

これなら、葉を手でもみ続ける手間が省けて、ムラも少なく染められます。発酵液がほんのりどぶ臭いという欠点はありますが、きれいに染めることができて大満足。

そして残った液でもう一色試してみることにしました。
藍のもうひとつの色「インディルビン」
藍には、青いインディゴだけでなく、赤紫のインディルビン(Indirubin)という成分も含まれています。
青色で染めた後の発酵液を、火にかけました。
発酵液を沸騰させると、酸素が一気に供給されてインドキシルが急激に酸化します。
この急激な酸化条件では、青よりも赤紫のインディルビンが多く生成されやすいそうです。
沸騰後15分ほどすると、緑色だった液体が「どぶ色」になります。その瞬間に絹を投入してください!私は10分ほどそのまま沸騰させました。
染め上がりは赤紫がかった紫色になりましたよ!
藍の奥深さを感じた瞬間でした。

生葉染めで得られる青色
生葉染めは、ウールや絹などの動物性繊維でないとうまく染まりません。
去年は襦袢地の絹に染めて、デザイナーのビギッタさんに「クロップ丈のジャケット」のアドオンパターンに仕立てていただきました。

今回も絹を使いましたが、胴裏生地です。
染め上がった色は、やさしいミント色。
伝統的な藍染に見られる深い青色でない理由は2つあります。
- 天然藍に含まれる赤紫のインディルビンによる色味の影響があるから
- 生葉染めは布の表面での酸化・弱い吸着による染色だから
深い藍色との違い
市販の藍染めや伝統的な藍染めで見られる深い藍色は、
乾燥葉をつくもにして発酵・還元させる藍建て染めで得られます。

- 水溶性のインディゴホワイトが繊維内部に浸透
- 空気酸化で不溶化し、内部に結晶沈着
このプロセスにより、より濃く深い藍色になるんですね。
私もいつか、乾燥葉を集めて天然発酵の藍建てに挑戦してみたいです。
難しそうに見える藍染めも、生葉染めなら気軽に始められるのが魅力です。
今年も小さなベランダのプランターから、涼やかな夏色をもらいました。

春になったら種をお分けしますので、来年挑戦してみたい方はぜひご連絡くださいね。
