ゼロウェイストSLIP DRESS制作記録
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店主のゼロウェイスト制作記録
はじめに
今年は、ゼロウェイストパターンのアレンジや制作のヒントとして、店主自身のゼロウェイスト制作記録を少しずつ紹介していこうと思っています。試行錯誤や途中の迷いも含めた記録ですが、みなさんの「次に作る一着」の参考になれば嬉しいです。
ゼロウェイストSLIP DRESS
今回作ったのは、Birgitta Helmerssonの著書『ZERO WASTE PATTERNS』に掲載されているSLIP DRESSです。

SLIP DRESSってどんな服?
日本語でスリップというと下着のイメージがありますし、英語でも元はドレスの下に着る下着なのですが、要はキャミソールタイプのロングワンピースということです。書籍のモデルさんのように一枚で着ても素敵ですが、今回は、半袖のTシャツや、白いワイドパンツと重ね着するスタイルをイメージしながら作りました。

使用した生地
書籍の作例は、ビンテージのテーブルクロスが使われています。
「ボリュームが出るかな?」と迷いましたが、今回使いたかった*楊柳(ようりゅう)生地との相性がよさそうだったので、チャレンジしてみることにしました。
📝 初心者メモ:楊柳とは、表面に細かいシボ(凹凸)がある、軽くて風通しのよい夏向きの生地です。
楊柳生地の藍染
モデルと写真でお世話になっている、のりえもんが藍染にはまっており
「なんか染めたいもの持っといで!」
とのことで、のりえもんのアトリエで、楊柳生地を染めてきました。
染め方のメモ
縛りの技法は色々あるけれど、今回は全体をふんわりと染めたいと思ったので、数カ所をゆるくゴムで結び、ドボンと漬けずに上からちょろちょろ染液をかけるという方法にしました。
2回染めた直後はこんな色合い。宇宙に迷い込んだようで、ずっと見ていられます。
この世界観を壊さないよう、できるだけシンプルなAラインワンピースにしようと、この時点で決めました。
生地幅110cmという制約
さて、ここからが実務的な話。ゼロウェイスト服で多くの人がつまずく「生地幅」の問題があります。
📝 初心者メモ:なぜ生地幅が問題か? ゼロウェイストでは型紙を隙間なくパズルのようにつなぐため、大きなサイズまでグレーディングする上で、ダブル幅の生地に全てのパーツをはめ込む方がデザインが簡単であり、実際にダブル幅以上のレイアウトが多く採用されています。
この生地も110cm幅であり、150cmを使う今回のレイアウトの制限に引っかかってしまいます。
バイアスという解決策
ここで思い出したのが、リズ(Liz Haywood)のバイアスアレンジです。
スパイラルワンピースの考え方
リズのザンシア(Xanthea)パターンに、生地を平行四辺形にしてトイレットペーパーのような筒にする、「スパイラルワンピース」アレンジがあるのはご存じでしょうか?作品例としてはあまり世の中に出回っていないのですが、このバイアスアレンジ、実はとても秀逸なんです。
📝 初心者メモ:バイアスとは?生地のタテヨコに対して45度方向に裁つこと。伸びやすく、落ち感が出ます。
110cm幅の生地を45度バイアスに筒状にすると、直角方向の有効幅は約78cmになります。これはつまり、周囲156cmのバイアス生地が無駄なく確保できる、ということです。
「うーん、110cm幅を横につなげれば220cm幅の生地になるけど?」
とも思いますが、横方向に接いで着丈120cmのワンピースを作ろうとすると、110cm幅が240cm要りますよね。そして脇に不要な幅70cmの生地が生じてしまう。
バイアスメソッドを使うと、幅方向の余りはゼロ、そして着丈120cmに必要な長さも約170cmでいいんです。
なぜ??と思う方、ザンシアの作り方のP35から詳しい説明と作り方を掲載しています。ぜひお読みください。
折しも、リズが自身のブログでこのバイアスメソッドを使ってビギッタさんのスリップドレスを作っていました。
The Craft of Clothes: リズのブログ
リズのブログは、ゼロウェイストに関する色々なトレンドや制作記録が定期的にアップされており、とても読み応えがあります。ゼロウェイスト好きの方は、是非読んでみてください。
リズのSLIP DRESS制作記録
https://lizhaywood.com.au/making-birgitta-helmerssons-slip-dress-again/
ビギッタのオリジナルのパターンでは、レイアウト図が150cm幅で書かれており、後ろ中心と脇に縫い目がきます。ですが、リズのバイアスメソッドで生地を準備すれば、後ろ中心も輪でとることができますので、裁断は脇とアームホールだけですね。

バイアス生地の扱い
ここで注意したいのは、地の目がバイアス方向であるということ。伸び止めの始末はアームホールにしか指示がありませんが、バイアスで裁つ場合は、前身頃と後ろ身頃の上端にも貼っておきたいところです。
そして、脇の縫い代をロックするときは、必ず差動を使いましょう!
📝 初心者メモ:差動とは?
ロックミシンで布の伸びを抑える機能です。バイアスやニットでは必須。
バストダーツ
このワンピースにはバストダーツがあります。ゼロウェイスト服の場合、ダーツは垂直・水平に入れます。従来のパターンのように斜めに入れると縫い代も斜めになり全体のシルエットに影響を及ぼすからです。ダーツを調整したい場合は垂直水平方向の移動に限定するように注意してください。

スリットを入れなかった理由
ビギッタのオリジナルのパターンでは、脇に60cmの深いスリットが入っていますが、今回は、
- バイアス方向で伸びる
- Sサイズでも生地幅156cmを使用
- 縫い代が波打った経験があった
ことから、スリットを省略しました。それでも、蹴回し216cを確保できているため、実用上の問題はなさそうです。
ゼロウェイストとしてのデザイン
ビギッタの手掛けるゼロウェイスト服では、襟ぐりやアームホールのくり抜きを裾に縫い付けることがあります。
「これってどんな意味があるんですか?」
と聞かれることがありますが、これはゼロウェイストであることを可視化するデザインです。私はこの要素が好きなので、省略せずに付ける事が多いです。

完成しました!
これで完成です。バイアス方向ならではのドレープが出て、とてもきれいなワンピースになりました。楊柳生地は軽くて柔らかく、真夏に大活躍しそうな一着になりました。

この制作記録は、「こうしなければならない」ではなく、「私はこう考えて、こう作った」という一例です。ぜひ、みなさんなりのアレンジの参考にしてくださいね。
